2025年03月30日
本文:使徒の働き(使徒言行録)23章
22章30節までに、ローマの千人隊長クラウディウス・リシアは、「ユダヤ人がこの男を訴える本当の理由を知りたい」と、パウロを縄から解いて最高法院(サンヘドリン)に立たせます。サンヘドリンは70人の議員から成るユダヤ最高権威。ここに早くも「ローマの行政権が福音のために働く」という神の摂理がのぞきます。
23章1節から5節を読みましょう。パウロは議員たちを見つめ、
「兄弟たち、私はきょうまで神の御前で良心に従って生きてきました。」
と宣言。すると大祭司アナニアは部下に命じてパウロの口を打たせます。パウロは即座に「律法に背く行為だ」と糾弾するも、律法(出22:27)を思い出し、「民の長をののしってはならない」とへりくだって謝罪。良心に立つ者は、怒号の只中でも自らを律法の下に置いて語る。この対照は、パウロが恐れる相手を人ではなく神と定めていることを鮮烈に示します。
6節〜10節:サンヘドリンはサドカイ派(復活否定)とファリサイ派(復活肯定)の混成。パウロはあえて声を張り上げます。
「私は死者の復活の希望のゆえに裁かれている!」
この一言で議場は大混乱します。双方が激しく争い、パウロは引き裂かれそうになります。千人隊長が兵を投入して再び兵営へパウロを引き入れました。ここで強調されるのは、パウロの宣教の芯に「復活」があることです。十字架と復活――この一点を語るために、彼は命を懸けています。
11節:真夜中の暗い独房に閉じ込められたパウロですが、そこへ主が立ち、言われます。
「勇気を出しなさい。エルサレムで証ししたように、ローマでも証ししなければならない。」
迫害のただ中で語られる約束は、「これから起こるすべての出来事が証しの舞台になる」という逆転の視点をパウロに刻みます。
翌朝、ユダヤ人40余名が「パウロを殺すまで飲食しない」と誓う計画を練ります。しかし、パウロの甥が偶然それを耳にし、兵営へ通報しました。迫害の計画が、人知れぬ家族の耳を通して打ち消される。この小さな糸口にも、神の守りが顔をのぞかせます。
23節〜30節:千人隊長は夜間、歩兵200・騎兵70・槍兵200=計470人という異例の大部隊でパウロをエルサレムからカイサリアへ移送します。送付状には「宗教論争以外に罪状なし。ローマ市民であることが分かり、救出に成功」と記されました。ローマ帝国の秩序が、福音の使者を守る盾となったのです。「人の悪意」は神の全能の力によって善なる歴史に飲み込まれ、エルサレムの路地から一気にローマ総督の執務室へと舞台が広がっているのです。
31節〜35節:騎兵はパウロを総督フェリクスの元へ送ります。総督は「訴え人が来しだい審問する」と告げ、彼をヘロデの官邸に安全確保しました。エルサレムで投石寸前だった命が、今やローマ法の要塞に守られる――主が語られた「ローマでの証し」への第一歩が、静かに踏み出されました。