2025年03月23日
本文:使徒の働き(使徒言行録)21章27節〜22章30節
パウロはエルサレム教会の長老ヤコブの助言に従い、清めの儀式を行いましたが、儀式そのものでは問題は解決せず、逆に暴徒に捕らえられます(21:27-30)。パウロは信仰の本質を曲げた妥協をせず、へりくだって指導者の勧めに従ったうえで最善を尽くしましたが、人々の憎しみは非合理で暴力的でした。
暴徒がパウロを石打ちにしかけたその瞬間、ローマの千人隊長が暴動を鎮圧し、パウロを兵営へ保護します(21:31-34)。千人隊長はパウロをテロリストだと誤解していましたが、パウロが流暢なギリシア語で話すのを聞き、彼がタルソ生まれの教育あるユダヤ人であることを知って態度を改めます(21:37-39)。
許可を得たパウロは階段の上に立ち、怒り狂う群衆を静めてヘブライ語で弁明を始めます(21:40)。「私は鎖につながれても、神の言葉はつながれない」(Ⅱテモテ2:9参照)との信念どおり、パウロは恐れずに福音を語りました。
パウロはタルソ出身で、ガマリエルのもとで律法教育を受けたこと、かつてクリスチャンを激しく迫害していたことを語ります。ダマスコ途上で復活のイエスと出会い、アナニアによって視力を回復し洗礼を受けた自分の劇的な変化を証ししました。伝道とは「自分に起こった変化を語ること」であり、これが福音の最も力強いメッセージであると示しました。
エルサレムで祈っていたとき、主は「あなたを遠く異邦人に遣わす」と告げられました。ユダヤ人が福音を拒むゆえに、異邦人へ救いが拡大する――この鋭い指摘が再び群衆の怒りを招きます。
ローマ市民権の行使と神の計画(22:22-30)
群衆が再度暴動を起こし、ローマ兵は鞭打とうとしますが、パウロは生まれながらのローマ市民であることを告げ、違法な鞭打ちを回避します。これは死を恐れたからではなく、「ローマでも福音を証しせよ」という神の計画を全うするためと言えます。兵士長は驚き、翌日のサンヘドリン(最高法院)で正式にパウロを弁明させる段取りを整えます。神は迫害をも用いて、より大きな宣教の舞台へ導かれるのです。
パウロは個人的には不要と思える儀式にも従いました。私たちも一致と愛のためにへりくだる姿勢が必要です。そして、人や状況を恐れる代わりに、神を第一に恐れるなら大胆になれます。困難や誤解、迫害さえも、福音を語る舞台に変わり得ます(ルカ21:12-13の成就)。そして、知識だけでなく、自分が主に変えられた体験を語ることが、最も心に響く福音宣教です。鎖につながれたパウロは、ローマ軍の階段の上を講壇に変えました。人は縛られても、福音は決して縛られません。
私たちも日々の試練を、神が用意された「証しの舞台」と受け止め、恐れずに主を宣べ伝える者となりましょう。