礼拝説教

金銀は私にはない。しかし、私にあるものをあげよう。


2024年06月02日

聖書本文:使徒の働き/使徒言行録 3章1-10節

主(しゅ)イエスの弟子たちにとっての宮は、師をローマの権力に売り渡して十字架刑で殺害した敵の集まっているところでした。本当なら近づきたくもなければ考えたくもない場所であったことでしょう。そのような場所に足を運ぶことには大きな葛藤と躊躇があったはずです。しかし、弟子たちの堂々とした姿を見てください。彼らはすでに憎しみを克服したのです。そればかりか、敵を愛し、福音を伝えようとしました。これが聖霊の人の生き方です。聖霊は、私たちに憎しみを克服し、敵を愛するようにさせてくださいます。

弟子たちは宮の門で足の不自由な人と出会いました。彼は「生まれつき」足が不自由だったのです。聖書には、生まれつき目が見えない人、生まれつき足が不自由な人が登場します。「生まれつき」とは、怪我を負ってそのようになったのではありません。避けることのできない宿命を負って生まれてきたことを意味します。この奇跡は、彼との出会いから始まります。足の不自由な人は自分で歩くことができないので、人々に毎日彼を担いで連れて来てもらっていました。彼はそこで物乞いをして生計を立てていたのでした。宮に来る人々は供え物を買うために、お金を持っていました。足の不自由な人は、小銭目当てに宮の門の前に座っていたのでした。

ペテロとヨハネは彼を見つめて、「私たちを見なさい」と言いました。足の不自由な人を見下ろしながら、何を感じたのでしょうか。それは「彼の姿こそ、かつての私たちの姿だった」ということでしょう。ガリラヤの漁師であった自分が、物乞いをして生きる足の不自由な人の姿と重なったのです。彼らの過去の実存的な姿は、座り込んでいる足の不自由な人と何ら変わりがなかったのです。かつて彼らも、漁師の家に生まれた運命に縛られ、自分の力で人生を変える考えも、能力もありませんでした。ただ、日銭のために生きる日々を繰り返していたのです。

「私たちを見なさい。」足の不自由な人は何かもらえると期待して、ペテロとヨハネに目を注ぎます。しかし、ペテロとヨハネは言いました。「金銀は私にはない。しかし、私にあるものをあげよう。ナザレのイエス・キリストの名によって立ち上がり、歩きなさい。」そして彼の右手を取って彼を立たせました。すると、彼の足とくるぶしがたちどころに強くなって、彼は躍り上がって立ち、歩き出しました。(使徒の働き3章4-8節)

足の不自由な人のなんと多いことでしょうか。彼のように運命に縛られ、他に希望もなく、未来もなく、日々食べていくためのお金だけを見て、いくら儲かるか計算だけをして生きている姿。これは私たちの姿そのものです。

しかし福音をいただいた私たちは、主イエスの名によって立ち上がらせていただいた者たちです。主イエスの驚くべき力によって祝福された者たちです。ですから、この時代にあって、運命に囚われている多くの魂を見つめながら、ペテロやヨハネのような心を持ち、そして、この奇跡を起こさなければなりません。奇跡は起こります。なぜなら、たとえ私たちに金銀がなくても、「私にあるもの」があるからです。

人生において大切なのは、自分を正しく認識することです。自分を変えるにも、正しい自己認識が先ず必要です。ペテロやパウロを見てください。彼らの自己認識は過信や妄想ではありませんでした。彼らは確かに金銀を持っていませんでした(第二コリント6章10節)。彼らはそのことについて非常に正直でした。しかし、彼らには「私は全ての人々を豊かにすることができるイエスの名と、すべてのものを持っている」という自己認識がありました。正しい自己認識こそが、主の力が表される奇跡の出発点であり、原動力なのです。

私たちも金銀がなく、何も持っていないということを痛感します。しかし、その一つの側面に縛られることなく、もう一度自分を見つめ直してみましょう。奇跡は、自分の名や権威によってではなく、ナザレのイエスの御名、その方の権威によって可能となるのです。この奇跡は私たちの人生に繰り返し起こらなければなりません。この驚くべきイエスの名の権勢が私たちに開かれるとき、この奇跡は私たちに起こり続けることでしょう。聖書に書かれているこの神様の御言葉は、今日も私たちに語りかけています。

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